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「それが、私だったと?」
助手は青白い顔で何度もうなずく。
「間違いないのか?」
「確かに博士でした」
「それで、私はどうなった?」
「わかりません」
「わからないって、私の容態を確認しなかったのか?」
「だって、気が動転しちゃったんですよ。急いで博士に知らせなきゃと思って、大慌てで戻ってきたんです」
助手が急いだところで私が事故のことを早く知ることにはならないだろうに。彼が乗るのはタイムマシンだ。私の容態を確認してからでも同じ時刻に戻ってくることはできるのだ。冷静に考えればわかることだが、彼もそれだけ動揺していたということだろう。
まあ事故を目撃してくれたことには感謝しなければならない。未来を知るのと知らないのとでは大違い。知っていれば対策も立てられるというものだ。
「よし、決めた」
助手は不思議そうな顔で、
「決めたって、なにをですか?」
「事故の日が過ぎるまで、私は一歩もこの研究室から出ないことに決めたのだ」
「それって、100日間家にも帰らないということですか?」
「帰らないだけじゃない。ここから出ないのだ。ここから出なければマンションに近寄ることもない。すなわち事故に遭うこともないということだ」
「そんな無茶な」
「無茶なものか。車にはねられることに比べたらどうってことはない」
「でもそれなら、事故の当日だけその現場に近づかなければいいんじゃないですか?」
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