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なるほど彼の言うお通りだ。私は事故の日が過ぎるまでここにいると決めたのだから、あそこで車にはねられるはずもない。
私が得心していると見て取ったのか、
「それなら確かめてきます」
助手は言いながらタイムマシンに歩み寄った。もう一度タイムトラベルを試みるつもりのようだ。しかしそれをちょっと待てと言って呼び止めた。
「え?確かめないんですか?」
「違う。事故が起こるのか起こらないのか、自分の目で確かめたいのだ」
それに、次は私の番ではないか、と言いたいところだが、大人気ないのでそれはやめておいた。
タイムマシンに乗り込み、操作パネルに行き先を打ち込む。
「では、行ってくる」
「気をつけて」
助手が見守る中、私を乗せたタイムマシンは時の奔流へと飛び込んでいった。
タイムマシンの扉を開く。見慣れた研究室の風景だ。そこに私が乗ってきたものとは別に二台のタイムマシンが並んでいた。一台は100日後のもので、もう一台は先ほど助手が乗ってきたものだろう。
一通り見て回ったが、ここには誰もいないようだ。おかしい。100日後の私はどうした?事故が過ぎるまでここにいると決めたはずなのに。
嫌な予感がする。まさかと思いながら自宅へと急いだ。
マンションの建物が見えてきた。100日後の自分の姿は見当たらない。あたりに視線を走らせるうち、通りの反対側にあるコンビニの看板が目に入った。そう言えば助手がそこで新聞を買ったと言っていたことを思い出した。そうだ。私もまずは日付を確かめるべきではないだろうか。ひょっとしたらなにかの手違いで事故が起こる日を通り越してしまったのかもしれない。
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