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「そんなこと知るものか」
「そんな無責任な!大変なことが起こるかもしれないんですよ?」
「私にとっちゃ今が大変な時なのだ。いや、今というより100日後か……」
「博士、自分さえよければいいんですか ?」
「当たり前だ。この世がどうなろうが知ったこっちゃない」
人間とは恐ろしいものだ。自分では人格者のつもりでいたが、追い込まれるとこのようや発言も平気でしてしまう。いくら奇麗事を言っても誰しもが自己中心主義なのだ。だからこの世は一向によくならない。
「考え直しましょうよ、博士」
生意気にも助手は私を説得しようとするが、そんなものには聞く耳を持たない。彼を無視して扉を閉めた。操作パネルに行き先を打ち込む。事故の一時間くらい前に行けば説得するには十分だろう。もし一時間の間に説得できなければまたさらに時間を遡って説得するまでだ。
研究室に着いた。先ほど来たときよりも一時間前ということになる。室内を見渡して気づいた。タイムマシンが一台もない。まだ助手が来る前だから一台はないにしても、もう一台はどうした。100日後の私が乗ってどこかへ行ったのか?
突然外へと通じるドアが開いた。そこから助手が入ってきた。どうやら100日後の助手のようだ。
彼は私を見るなり目を丸め、私の頭の先から足の先までしげしげと見つめた。
「博士、今までいったいどこへ行っていたんですか?」
「どこってなんだ?どういう意味だ?」
「だってかれこれ三ヶ月ほど研究室に戻って来なかったじゃないですか。それに連絡もつかないし、心配していたんですよ」
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