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砂連尾が砂連尾ではなかった。
ひとりの坊主がそこにいた。
いがぐり頭の理由を聞けば、生まれて五千五十二日記念だ、なんてテキトーなことを言っていたけど理由はぼくにあると思うのは考えすぎかな。ぼくに負けたのを反省、というのはなさそうだけど、ぼくと同じ髪型なのがいやだったのかな。じゃあちょっと悪いことをしたかもしれない。
休み時間、お手洗いへ行くタイミングが重なって、用を足し終え、ともに手を洗っているとき、砂連尾が何か思いついたようにこう告げた。
つぎの期末テスト、主要五教科の合計点で勝ったほうは負けたほうの言うことを聞く。
ぼくは応じた。砂連尾は鏡越しにぼくの頭と自分の頭を見比べていたから、どうせ、ぼくを変な髪型にしたいとでも思ったんだろう。期末までまだ時間がある。負けたときのために伸ばしておこうか。
――それからというものぼくらはよく会話し、ときに勉強でわからないところを教えあい、ときに煽りあい、ライバルのようなものになっていた。砂連尾の懐事情はあまり芳しくなく、ともに買い食いしたりどこかに出かけたりするようなことはなかったけれど、それはそれで楽しかった。
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