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ツーサイズ大きめの制服はいまだにぶかぶかなままで、まだまだ新一年生と見紛わんばかりだった。クラスで一、二を争う小柄なおれにいつ成長期が来るのか。
どうやらふつうの家は子供が新聞配達なんてやらないらしい。どうやらふつうの家はゲーム機だってあるらしいし、父親は働きに出るものだとも聞いた。
ふつうでありたかったが、すこしはみだしてしまっている感じだ。だから百パーセントを出さなきゃ世間という枠に身体を収められなかった。必死すぎて浮いているかもしれないが、はみ出してはいない、と思う。
余裕そうに世間の枠に収まっていた宮守を最初は嫉視していたが、いまはもったいないという気持ちのほうが強くなった。本気になれと。全力を出せば上に行ける潜在能力があるのなら発揮するべきだろうと。
百パーセント必死でやってなお余裕そうなお前を超えられないおれのような人間に対する侮辱じゃないのかと。
宮守に本気を出させたい、対等になれたら気分も晴れるだろう。
そう思っていた。
――ふと前の席の男子生徒が友人とテスト結果の話題を終えてこちらを振り返った。
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