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 なんでもできるみたいなイメージがつきそうになって、ふと考えた。  はたしてそれは有用なのか。利点と欠点を天秤にかけた結果、欠点のほうが重たかった。あくまでも、ぼくにとっては、だ。  それからは手を抜いて七、八十パーセントくらいの力にとどめてきた。出る杭に厳しい社会だと幼いぼくは判断した。突出したくなかった。正直、目立っても面倒くさいことになる気がしていたのだ。そうして得た平穏な日々、ことさら勉強ができるわけでもなく、スポーツ万能なわけでもないが、ありがたいことに気にかけてくれる人はいた。  そんな彼らとテスト結果について談笑を交わす。冗談か本気か、ぼくに勉強を教えてと乞う男子がいて、詳しくないとはぐらかした。  訪れた会話の隙間、漏れ聞こえてきた点数は、勝手に因縁を見つけて気にかけていた男子生徒のものだ。  砂連尾(ざれお)に対する印象は、頑張り屋さんだった。いっつも汗をかいて、走り回っていたからね。  ぼくとは真逆に見えた。つねに百パーセントで生きていて、ぼくがかつて選ばなかった道を突き進むその姿に勇ましささえ見いだしてしまった。  そんな砂連尾のテストの合計点がぼくを上回っているのを知った。
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