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 ぼくは四百十二点。  辛勝も辛勝だった。 「あの……百パーセントって、どうやるんだっけ?」  ぼくのつぶやきに砂連尾は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてから、図書室にもかかわらずげらげら笑った。 「いまのこれが、百パーセントなんだろ」  ここが図書室だと思い出して笑いをこらえている砂連尾の隣でぼくは思い知らされた。  ぼくの百パーセントはこのていどだったのか。とんだ自意識過剰ぶりだ。恥ずかしい、なんと恥ずかしい!  恥ずかしがるのは置いといて、これは幸運だったと前向きに受け止めよう。ここで気づけてよかったんだ。自らの実力を見誤ったまま進むのは危険だったはずだ。砂連尾のおかげで助かった。  帰り道、妙に吹っ切れた気分だったぼくは砂連尾に対して思っていたことを口にした。  きみは主人公みたいだ、と。逆境にも負けずに努力を続けて先のテストではぼくを上回った。  なんとなくうさぎとかめみたいだと思った。地道に進み続けてうさぎを超えたかめのようだったから、主人公に見えるよ、とぼくは伝えた。  ○  なんか知らんが煽られた。かめのようにのろまで、うさぎの油断に付け入るしか能がないと言われた――わけではない、わかっている。これまでの自身の価値観とは反対のことを言われたから、戸惑った。
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