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「わー!おおきいすべりだい!」
車の後部座席に座った4歳の息子から歓声が上がる。ここは子供連れに人気の公園で、全長60メートルのローラー滑り台がある。新緑の木々の向こうにそのカラフルな滑り台が見えてきた。今日は少し遠いこの総合公園にやってきた。
土日はたくさんの人で賑わう公園も、平日のため人影はまばらだ。いるのはベビーカーや足取りがおぼつかない小さい子とその母親たちだ。そう、今日息子は保育園を休んで遊びに来ている。
女一人の私が子供を育てていかなければならなくなったとき、選んだ仕事は看護師だった。貯金をはたき、親にも無理を言って看護学校に通い免許を取った。そうして今勤めている職場は、給与や待遇もいいがやはり夜勤はさけられず、普段、唯一頼れる自分の母親に息子の面倒を頼むことも多く、息子に寂しい思いをさせているのは事実だった。
今日はたまの休みである。自分や家庭のために使うこともできたが、前々から息子に言われていた「いっしょにこうえんへおでかけ」の願いを叶えてやろうと思い、平日にも関わらず保育園に欠席の電話を入れ、こうして遊びにきている。
念願のローラー滑り台を一緒に滑り、もう一回、もう一回とはしゃぐ息子に引っ張られて計5回滑り終わると、息子は今度は坂道を下り、一段下の池の方へ走っていった。子供のエネルギーについていくのは大変だった。
池に来ると鯉が泳いでいた。遠目にはわからなかったが、かなりたくさんの鯉がいて、小さいのや大きいのが悠々と泳いでいる。
ふと、池のほとりに目をやると、「さかなのえさ」と書いてある販売機が目に入った。これで鯉にやる餌が買えるらしい。ただし、販売機はとても古かった。
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