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……もー。あいかわらず鈍いな、しょーちゃんは。
気づくの遅すぎ。
だいたい、体育倉庫裏なんて、告る告られるってときくらいしか行くことないでしょーよ。
てか、しょーちゃんだって呼び出されたことあるくせに。知ってんだからね?
……なーんてことは、もちろん言わず。
「ちょうどよかったよ。帰るタイミング見失ってたから」
真っ黒なくせっ毛が、雨でいつもよりくるくるしてる小さな頭。そこに指を通しながら、俺はさらりと告げた。
「うわ、慣れてんなー。さすが『王子』」
ほっとしたように笑ったしょーちゃんが、髪をくしゃくしゃにする俺の手から逃れようと、「やめろや」なんて目をつぶって頭を振る。
俺はちょっと微妙な気持ちになった。
「……しょーちゃんの方が」
――王子だよ。俺なんかより、ずっと。
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