百足坂

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 目の前には小さな広場と、小さな社。――お百堂。  いつ建てられたのかもわからない古ぼけた社が、暗くぽっかり開いた空間の中でちょこんと鎮座している。  祐二はいつも通り、社の前に来て膝をつき、賽銭箱の中に五円玉を滑り入れる。鈴からでろりと伸びた布を振れば、中が錆びついているのか音は鳴らない。そうして手を合わせて無心に祈る。――“彼女”もこうだったのだろうか。  たっぷり数十秒。いつもより長めに祈り終えると、清々しい達成感が祐二を包み込んだ。  もしかしたら明日、苛めグループは皆病気で死んでいるかもしれない。あるいは登校中に揃って不慮の事故とか。明日登校してしまえば、きっと砕かれてしまう希望だが、今この瞬間だけは期待で胸が膨らむ。  さあ、帰るか。――今日は久々にぐっすり眠れそうだ。
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