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ストーカー気質
お題『熱い眼差し』
今回は時間制限無しの作りになっております。
背後から伝わる黄色の視線とは違い、ある男は堂々となる姿勢で熱い眼差しをこちらに向けた。
俺は、と言えば自身初の作詞と作曲を手掛け、なんと有難い事にオリコンチャートの1位を獲得する事が出来た。
それに伴い、歌番組に出演する事が決まった。ステージの前には沢山のファン達が俺の歌を心待ちしている。
まずは司会者の2人と今回の楽曲についてや故郷の話などをしていく。ステージの準備を終えた合図が伝えられると、司会者の1人が話をキリよく終わらせてくれた。
「さて、ステージの準備が整いましたので秋月隼斗さん、お願いします」
スムーズに流れる進行状況に緊張しつつも、ちゃんとしなきゃという気持ちを震え上がらせる。
もう行かなきゃ。
「はい、宜しくお願いします」
素早く立ち上がり言葉を交わした。そのままステージ場に向かい、マイクのチェックやバックに居る演奏者と最終調整する。
これで大丈夫だと思ったら、合図を出し司会者に伝わっていく。
「秋月隼斗さんで、今回自身初となる作詞作曲を手掛け、オリコン1位を獲得した、この歌です。どうぞ」
軽い説明を使い、視聴者に興味を持たせる。そんな内容で紹介された。
カメラは司会者の方に向けた状態からこちらに向きを動かした。
イントロが始まると直ぐ歌うように作っている楽曲で、より一層胸の鼓動が高鳴る。
よし、始まった。
音楽に自分が乗っかるよう身体を動かし、耳元に取り付けた専用イヤフォンから音楽が流れ出した。
♪〜♪〜♪〜
フルとは違い、1分程度のショートバージョンに作り直した。
ステージ場の前に居るお客さん達の反応も良かったし、歌詞も間違えずに歌い切る事が出来た。
それだけでも大きな成功かもしれない。
「秋月隼斗さん、有難うございました」
拍手に包まれながら、司会者にお礼を言われカメラに向かって深く頭を下げた。
何事もなく出番は終わり、マネージャーと楽屋に戻る。
その途中に見覚えのある男性歌手が現れた。
「おめでとう、隼斗君」
俺よりも数十センチ高く、音楽の系統も違うロックバンドのボーカルに会った。その男は俺を下の名前で呼ぶ間柄でも無いが、一応業界の中では先輩に値するからちゃんと挨拶しようと思う。
「有難うございます、宮坂さん」
こちらは相手を名字で呼び、マネージャーと共に立ち止まる。軽く会釈も据えて。
毎度、俺が反応すると笑顔を浮かべながら親しげに肩を寄せてきた。
少し寒気がするし気持ちが悪い。
「今後の活躍も楽しみにしているよ」
俺の思いとは裏腹に今後の期待を言われた。人気の高いバンドのボーカルに言われたのだから、何だか自分自身の楽曲が認められた気持ちになる。
まあ、セクハラ紛いな行動は別として耐え凌ぎ、宮坂さんが去るのを待った。
この宮坂さんは、事ある毎に会ってしまう関係だ。親しい訳でもないのに何故だと疑問に思うが、それについては数日後に知る事となる。
END
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