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花火
お題『鈍行列車』『打ち上げ花火』
8月の始め、夏休みの期間だからと裕也は呑気に昼間から寝ていた。
母親に何度起こされても、起きない為に呆れられている。
けれど母親以外にも起こそうとする人間が、もう1人居る事を裕也は忘れていた。
「なぁ、なぁ! 起きろって!」
心地いい眠りを妨げる程の強い揺さぶりに、大きな声で目が覚める。
「なんだよ、晶」
裕也は目を擦りながら、起き上がる。晶に向かって低い声で気だるげに返した。
目の前にドアップで写り込む辺りもウザい友達だ。だけれど嫌いではない。
「今日、美風駅近くで花火大会あるらしいよ!」
何事かと思ったし、どうせしょーもない話だろう。そう予想していた。
「マジか!」
なのに晶にしてはでかした話題だった。勢い良く出た言葉で余計に晶は嬉しそうだった。
「20時半だから、もう行かないと始まっちまう!」
晶に腕を引っ張られ、花火の時間帯を言われた。目覚まし時計を恐る恐る見てみると、なんと19時半だった。
最寄り駅から美風駅までは約1時間。今行けば、着く時に花火が丁度始まる時間だ。
早くしないと! と起きたばかりの裕也は焦り出す。
その反面、晶は裕也の肩を触り落ち着かせようとした。
「親に言って、日景駅に集合な!」
行く気満々なのが、晶に伝わったのか晶も益々本気になった。晶の合図に裕也は頷いて行動に移す。
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