灰色の檻

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灰色の檻

教室の窓際。曇った空を映す窓を眺めて授業を聞き流す。チャイムが鳴ったので、机に向かい合う。というか伏せて寝る。もう一度チャイムが聞こえて、顔を上げれば周りの子たちはみんなお弁当を広げて楽しそうに話をしている。寝る前の授業は確か2限だったから、二時間続けて寝てたってことだ。先生は私を起こそうとしないし、クラスメートは近づきもしない。今も、ほら、目があった子の笑顔が一瞬で固まって、口を開きかけて、その後ぎこちなく笑う。なんだか申し訳なくなって私も少し笑ってみる。その子は、ほっとした顔をして会話に戻った。 いつからだったっけ。遅刻しても授業中寝てても怒られなくなったの。指名されて答えることがなくなったの。みんなが気まずそうに笑ったり、話しかける時すごく言葉を選ぶようになったの。 わすれちゃったな。どうしてだっけ。まあいっか。あ、雨降ってきた。傘あったっけ。次の授業、抜き打ちテストがあるんだ。寝とけばいいかな。きっと起こされないし。うん、そうしよ。 チャイムが聞こえた。顔を上げればみんなが帰る準備してる。また二時間寝てたんだな。今日も夜眠れないだろうな。 帰り道を歩けば葉が落ちた木がポツポツ生えている。色のあせたコンクリートの地面と塀と、雨を降らしている雲。まるで、灰色の牢獄のように私を囲んでいる。車が吐き出すのも灰色の煙。それを吸っている私の体の中もきっと灰色だ。 最後の曲がり角を曲がると家が見えてきた。壁はクリーム色というより黄色に近く、屋根は真っ赤だ。心なしかすれ違う人も眩しそうにしている気がする。 なにも届いていないポストを確認して、黒い格子の扉をあける。視線を感じてふりかえると、少し離れたところに男子生徒が立っていた。同じ学校の制服。見慣れた顔。隣の家に住んでる幼馴染だ。目があうと彼は口を開きかけて、やっぱり硬く笑う。どうしていいかわからないので、私も少し笑う。彼はほっとした顔をして隣の家に入っていく。 それを確認して私もこげ茶色のドアを開ける。 毎日同じことを繰り返している。 いつからだっけ。 どれくらい前からだったっけ。
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