望み

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望み

とても不思議な字だった。幼さもあれば、やけに達筆でもある。生きているようでもあれば、死んでもいる。そんな矛盾が合わさったような字だった。ただ、とても懐かしい温かさがあった。 気味悪さを感じたがなぜか捨てる気にもならず、それらを封筒に戻して夕食を食べることにした。私の好物、ハンバーグのお弁当だ。うん、普通の味。少し前までは美味しく感じたのに。作り方でも変えたのかな。最後まで食べきれないや。明日の朝ごはんにしてしまおう。 夕食を終え、風呂に入って、髪を乾かし、布団に潜る。明日はたしか日直だから早起きしなきゃ。そう思って羊を数えてみる。10分、20分、1時間。しかし、全く眠れる気がしない。しょうがないので少し本でも読もうかと目を開けると、机の上にあの白い封筒があった。確かリビングに置いてたはずなのに。普通なら怖がっても不思議ではないこの状況で、寝転んだまま自然に石を取り出した。別にこの石の力を信じた訳では無い。こんなイタズラを誰がしたのか、とさえ思っていた。しかし、私はその石を手のひらに乗せ、両手で包み込んだ。 万が一にも出来るものなら、私の望みを叶えてみせてよ。 ただただ、思った。 この悲しい記憶、全部まるごと消し去ってよ。 そうしているうちに眠ってしまった。
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