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「お待たせいたしました。・・・あの人見てばっかりいるとせっかくお出ししたものが台無しになります。今はこちらを優先してください。」
学君はわざとなのだとうか、私から律が見えない場所に立つ。
「ちょっと!」
私は学君を睨む。睨んだ理由は二つ。私の視界から律を奪ったこと。あともう一つ。私の心の中を暴いたこと、誰にも気づかれないようにそっと見ていたのに。
「いつもずっと見て、声を掛けたければ掛ければいいじゃないですか。」
淡々と無表情に言う学君。腹が立ったけれど私より年下にごもっともなことを言われて何も言えなかった。
「もう、いいわ!いただきます!」
焼きたてのパンに齧り付く。こんなに嫌な気持ちだったのに美味しいと思えただけで気持ちが少し浮き上がる。
「早く、あんな奴、諦めればいいのに。」
「まだ、いたの?何か言った?」
学君が何か言った気がしたのでじろっと目玉焼きをつつきながら言うと、ごゆっくりどうぞと言って厨房に戻って行った。なんなの?!今の私より若い子は本当に可愛くない!
その後、マスターがこの様子を見たのか、自家製チーズケーキをサービスしてくれたのでささくれ立った気持ちはすっかりおさまったけれど。
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