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年下だけど
「オーナー、ホールの片づけは終わりました。厨房の片づけできることありますか?」
俺は使った布巾を洗濯籠に入れながらオーナー、父さんに聞いた。仕事の時はオーナーと呼び敬語で話すようにしている。働く以上、お金を貰う以上、家族だからと甘えたくないし、俺の好きな人はきっとそうやって毎日頑張ってること知っているからだ。
「こっちはもう大丈夫だよ。先にあがって、ご飯食べてきなさい。」
お疲れさま。そう言われてようやく仕事が終わったことになる。口調も華族の時の話し方に戻す。
「ご飯、これから作るよね?だったら、俺今日作るよ。」
いつも仕事の途中で作ってくれる晩御飯は今日は忙しくてまだ作っていない状態だった。仕事が終わったら出来上がったものを持って自宅で食べるのだけど、たまには親孝行しようと思った。けど、父さんはおかしそうに笑い、
「里佳子さんのことで何かいいことあった?」
いいことあった?じゃなく里佳子さんのことで、と言うあたり、俺の心の中が分かってるようで少しムカつく。
「オムライス作るから、早く終わらせなよね!」
父さんの聞いてきたことには無視して急ぎ足で階段を上がり、2階に向かう。
下から、親子なんだから分かるさ。という父さんの声が聞こえた。
でも今から数時間前の出来事を思い出すと今なら、些細なことは気にしないと思う。
「楽しみだな。」
俺は口元がにやけているのを感じて思わず手で押さえた。
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