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幼い頃に両親を亡くして以来、ずっと祖母と暮らしていたから駄菓子屋も私の一部だった。駄菓子屋を継ぐのかと周りに聞かれたけれど、大学を卒業し大手企業へ就職。総務課に配属されたものの、うまく馴染めず退職した。
逃げてしまったという罪悪感に苛まれる私に、祖母は「好きなだけお菓子を詰めなさい」と百円玉を握らせてくれた。この歳になって百円玉か……と思ったけれど、数えきれないほどの駄菓子から好きなものを選ぶのは意外に楽しかった。言われた通り百円以内に収めレジへ持っていくと、祖母は柔和な笑みを溢すのだ。
「結愛ちゃんは、どうやってこのお菓子を選んだんだい?」
「んー。まず好きなお菓子を選んで、そこから百円になるように選んでいったよ」
すると、おばあちゃんは私の選んだお菓子を白いビニール袋に詰めながらこう言った。
「百円という決められた値段できちんとお買い物ができた。それはとても立派なことなんだよ」
人生は買い物と似ていて、品定めをし取捨選択をしていくものだ。自分にとって"今"何が必要なのかを判断し行動することは難しいけれど、それを導き出して一歩を踏み出せることはとても立派なことなのだと教えてくれた。
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