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エピローグ
真弓と陸斗と一緒に、神主さんに会いに行った日から7年が過ぎた。
杏花は相変わらず病院で寝たきりだ。
山本さんと母が交代でお見舞いに行っている。
私は大学を卒業した後、芸能界に入り、女優の道を歩んでいる。
数字が全ての世界で、何とか生き残れているのは運とタイミングのおかげだろう。
今も杏花は私の中にいる。
最初のうちは、杏花とトラブルが続いていた。
どちらが私の身体の主導権を握るのかで対立した事も何度もあった。
だけど、真弓や陸斗、サークル長、それにアイドル達の助けもあって、半年が過ぎた頃から、杏花が私の身体を使って暴れる事も、無茶な行動に出る事も無くなった。
私はずっと杏花の望みに気づかなかった。 杏花の本当の望みは幸せな家庭だったのだ。
今、杏花は私の中で穏やかだ。
私が女優になったのは杏花の夢を叶える為。 仕事は2人で協力してこなしている。
杏花は寝たきりなので罪に問われる事はない。
だけど、今の杏花は過去の罪を反省している。
来月、杏花が苦しめてしまった人たちにお詫びに行く。
自殺した杏花の彼氏と、死んでしまった赤ちゃんのお墓参りにも行こうと思っている。
2人で1人の身体を共有して大丈夫? と聞かれたら、今は幸せだよと答える。
元々私と杏花はお母さんの中で一緒だったのだ。 そして、今また一緒になっただけ。
別れている間に経験したつらい事、苦しい事、恨み、悲しみ、喜び、全ての感情が今、私の中で一つになっている。
杏花、いつまでも一緒だよ。
完
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