呪禁師は、けっこう危険な職業なのです

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「あれえ? あたい、何してんのぉ」  滝川の腕の中で、アゲ嬢がとぼけた声を出した。 「お前さんの体に取り憑いていた悪霊を祓ったのじゃよ。悪霊の正体は、ご主人の前妻じゃ。前妻も建築家で、消されたパソコンのデータは、彼女が設計を手がけた仕事だったのじゃ。別れた夫に無断使用されるのが、気に食わなかったのじゃろう」 「やだぁ! 霊だなんて怖ぁーい。ねえダーリン、ここってボロ家で薄暗くって、マジ気味悪いよ。早く帰ろう。アリサ、お腹がすいたなぁ」  アゲ嬢は正気を取り戻した。しかし話の内容がとんちんかん、見た目通りのバカ女だ。  皆があきれ返ってアゲ嬢を眺めていると、彼女の背後で守護霊の女性が、申し訳なさそうに頭を下げた。幕末時代の霊で、きれいな芸者さんだ。  よしよし、戻ってこれたのか。バカ女のお守りをさせられて、あんたも苦労してるね。アゲ嬢の守護霊さんと同じように、滝川も、その守護霊もペコペコ頭を下げている。 「元奥様にちゃんと謝罪をするのじゃぞ。誠意を見せるのじゃ。そして過去のデータを使用する許可を得よ。ただし、相手は意識して悪さをしたわけではない。生霊を飛ばしたことすら本人は気づいておらぬ。話を進める際は慎重にな」  トクさんは、高笑いをしながら相談者を送り出した。これにて一件落着。お次はお茶でも飲みながら、本日二組目の相談者と会おう。
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