42人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
今のいきなりシリアスな会話
栢山家に戻ると、珠玉姫はそのまま縁側に座っていた。頬杖をつき、視線はどこか遠く、竹垣の向うを見つめている。あたしは彼女の隣に座った。
「お帰り。で、首尾はどうだったの?」
「相手はコックリさんでした。あたしらが現場に到着したら、すでにもぬけの殻でした」
「低級霊の逃げ足は速いものね。さて、と、さっきの……」
「情動反応玉響ですね」
「そう。あれから私も少し考えたのよ」
珠玉姫は少しだけ眉根を寄せて、意味もなく指を組み替えながら話し出した。
「だけどねぇ、どんなに考えても、どうにもわからないの。情動反応玉響は、心にトラウマを抱える生きた肉体を持つ人間霊が、そのトラウマと対峙する時に見るものだわ。それがどうして、自然霊のあなたに見えたのか。通常ならばありえないことなのに。しかも私には全然見えず、あなただけに見えた」
「そうですよね。奇妙です。どうしてでしょうか?」
「答えは一つ。あの玉響は、アラーム・クロックだったのよ」
「はあ。ってことは、目覚まし時計という意味ですか?」
うなずく珠玉姫。これはまた、シュールなギャグをかましてくれるじゃん。思わず鼻嵐を吹いちゃったよ。しかしながら珠玉姫は、こちらの気持ちを知ってか知らずか、「たぶんそうよ」としゃあしゃあとしている。
「あの玉響は、ずっと以前から仕組まれたものだったの。目覚まし時計のベルが鳴るみたいに、初めからあなたに見せるつもりで、誰かがセットしたものだったのよ」
あたしは思わずのけぞった。えーっ、マジ。嘘や冗談でなく、本気の答えで目覚まし時計ですか。
「それって……。生きた人間を対象にせず、自然霊のあたしを相手にですか?」
「神霊界の常識ではありえないわよね。だけどもアラーム・クロックなのよ。考えれば考えるほどに」
「ち、ちょっと待ってください。あの玉響がアラームとしてセットされたものなら、いったい誰が? 何のために?」
最初のコメントを投稿しよう!