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「はぁ〜!潤った!潤った!……ん?どした?何ボーッとしてんの?」
「ん?いや、何でもない。」
「おまえってさー、なんかよくボーッとしてるよな。」
そう言ってヒャハハって笑う顔に胸がキュッとなる。これも〝意味わかんねぇー〟のかも知れないけれど、この少し癖のある笑い方も大好きだったりして……。ワハハでもなくハハハでもなく新太はヒャハハって笑うんだ。
笑うと普段は整った凛々しい顔が幼くなるんだよなぁ……はぁ、かわいい。
てかさ、おまえがいるのにボーッとなんてしている訳がないだろう?ずっと見てたんだよ。おまえが麦茶飲んでるとこ。汗ばんだ喉がゴクリと音を鳴らして動く様が妙にエロくて、もう少し飲み干すのが遅かったら、多分押し倒してた。
…………。
いや、嘘です。それは嘘です。ごめんなさい……。そんな勇気があれば、もう4年も親友のフリをして不毛な片思いなんてしていない。
新太は何も知らない。俺がどんな目でおまえを見ているかなんて。
新太との出会いは中学に入学して、まだクラスの半分くらいは名前も覚えてないくらいの間もない頃で、確か全校集会の日だった。
普段は遅刻なんてしないのにこの日に限って寝坊してしまった俺は、これはどう考えても間に合わないと諦めながらゆっくりと学校へ続く坂を登っている時だった。
突然後ろから肩を掴まれ、次の瞬間には腕を引かれていた。
「え?ちょっと……え?……」
「頑張れば何とか間に合う!だから頑張ろ!」
「はぁ?……いや、もう無理だって。てか誰?」
「わかんねぇだろ!間に合うかもしれねーじゃん!ほら、行こう!」
状況が呑み込めないまま、ぐいぐい腕を引かれ、いつのまにか一緒に走っていた。汗だくで体育館の扉を開けると、丁度集会が始まった所で、「ほら!間に合っただろ!」と嬉しそうな新太の大きな声が体育館中に響いて、そこにいた全ての人たちが俺たちを振り返った……ような気がした。
おかげで入学そうそう職員室へ呼び出しをくらい2人一緒に頭を下げる羽目になったのだった。
「間に合ってたのにな……何で怒られなきゃいけねーんだよ。」
「いや、でもあれは……多分アウトだろ。」
「何で?まだ始まってなかったのに?」
「まぁ、、、てかさ、誰?」
「誰って、あれ?まだ名前言ってなかったっけ?」
新太はとぼけたようにそう言って、ヒャハハって笑った。
そう、この ヒャハハ に恋をしてしまったんだ。
その日から見える物全てが輝いて見えたし、有名な恋愛ソングも頭の中を流れたさ。
それから4年。何も変わらない関係が続いている。変わったのなんて身長くらいで、、、あ、後はそうだな……昔より今の方が遥かに新太が大好きだって事かな。
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