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「……」
美奈は子どもみたいにしゃくりあげながら、響の顔を見た。彼の言葉の真偽を確かめるみたいに。
「仕事とか家のこととか…いろいろあって、今すぐミーナとのこと、どうこう出来ないけど…二度と自分からミーナの手、離さないから」
「うん…」
聞くのを躊躇い、考えるのが怖かったふたりの未来。でも、響がそうして感情を露に言ってくれると、少し光が射すような気がしてくる。
「愛してる」
甘い言葉と共に落とされるキスは、美奈の心にこれ以上ないくらいの勇気を与えてくれる。
ふたりで冷凍のうどんを啜ってから、美奈は雄大の元に帰ると宣言した。
「帰っちゃうの?」
響の顔が一気に曇る。美奈だって不安がないわけじゃない。でも、このまま響と逃げてしまうのは、違うと思うのだ。
「…うん」
雄大に別れを告げて、きちんと離婚してから、響との未来を築きたい。美奈らしい筋の通った考え方だ。
「平気?」
「わかってもらえるよう、努力する」
「無理だったら、すぐ逃げてきて」
「うん」
響に送って貰った家の近くの公園で、ふたり長い別れのキスを交わす。
「じゃ、また連絡するね」
離れがたい気持ちを振り払って、美奈は明るくそう言った。
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