エピローグ

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ひねくれ者という自覚はあるのか、珍しく響にストレートに好き、なんて言われて、美奈の頬がぽっと赤みを帯びる。そういえば、一瞬頭から飛んでいたけど、感動の再会、のはずなのだ。 でも何か改まって、抱き合ったりキスしたりするには、少し間延びしてしまった気がする。そして、このいかにもなシチュも妙に照れくさい。 「響、これ何?」 わざとらしくはしゃいで尋ねる。 「んーと、料理長の滝さんが作ってくれた賄い」 響は畳の上で胡座をかく。緊張しきりの美奈と違って、響の方はごく自然体にリラックスして見えるのは、ここが彼のテリトリーだからだろうか。  ばら肉の他に、キャベツや人参、アスパラなどが入った焼きうどんがふたつ、お盆の上には載ってた。ラップに包まれてはいたが、つやつやした見た目から、恐らく出来たてなのだろう。 「あ、響、ご飯食べてないんだもんね。どうぞ…」  召し上がれ、とお皿の上に述べた手を取られて、そのまま彼の腕の中に閉じ込められた。 「俺はミーナが食べたいんだけど」 「……」  またも直接的な表現に、美奈は返答に詰まる。否、の返事は用意してない。でも、『どうぞ』って言うのも、何となく恥ずかしい。 「じゃ、じゃあ先にお風呂入りたい」  苦し紛れに美奈が放った一言は、却って彼女の首を締めることになるのだけれど。 「そこ、露天あるよ。じゃ、一緒に入る?」  窓辺を指さし、響がしれっと言った台詞に、美奈はのけぞった。 「――!!」  そんな話は聞いてない。
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