後日譚 1 忘れ花

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次の日。 美奈の身体を掻き抱いて眠ってた響は、奇妙な感触で目が覚めた。自分の腕を置いてた美奈の腹部がもぞもぞと動いてる。最初は錯覚かと思ったが、違う。 「み、ミーナ」 なんとなく不安になって、隣で眠る彼女の肩を揺さぶった。 「お腹…変じゃない?  動いてるんだけど」 そう言うと、美奈の方がきょとんとしてから、くすくすと笑い始めた。 「響、初めてだった? これねえ、胎動。あかちゃんが動いてるんだよ、お腹の中で」 「えっ、もう?」 病院に行く度に見せてもらうエコー写真だと、まだまだ人間なんて呼べないような不可思議な生き物なのに。 「いつもはもっと微かな振動なのに。今日は激しいかも。昨日、響が散々荒らしたから、驚いてるのかな」 「……」 そりゃどうも、すみませんね。つうか、そこ俺のモノだったのに、勝手に入り込んだ挙句、居座ったのはそっちなんじゃ。まだ見ぬ我が子に甚だ大人げないことを思ってから、美奈の腹部に手を当てて、もう一度生命の証を感じようとする。 けれど、何故かその後はピタリとやんでしまった。 「寝ちゃったかな…」 「かもね。あー、いいな、気持ちよさそう。俺もミーナの中、入りたい…」 両手を腰の前で組んで、美奈の肩に顔を埋める。そういえば、美奈の匂いも少し変わった。甘いミルクの香りが、もう漂う。心が落ち着く匂い、懐かしい母の匂いだ。幸せな気分に酔いしれて、響はゆっくり目を閉じた。                            (忘れ花 完)
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