愚かしい愛情

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「こ、こんなところじゃ…」  不安定な体位に美奈は身をよじって逃れようとするが、雄大は美奈の片足も持ち上げてしまい、それを許さない。 「美奈のカラダはここでいい、と喜んでるみたいだぞ。久しぶりだっていうのに、柔らかいな。喜んで飲み込んで、だらだら涎を垂らしてるじゃないか。寂しかったんだろう、美奈。僕が愛してるのは君だけだよ」  今の美奈には白々しく思える愛の言葉を口にしながら、みしみしと雄大は美奈の中に侵入してくる。「違う」と声を張り上げて否定したい。  雄大に対して、かつて覚えたことのない憐れみと可笑しさがこみ上げた。 ほんの数時間前に、美奈が他の男としてきたことを彼は知らない。雄大のさえ咥えたこともない美奈が、口で奉仕してあまつさえ、精液まで飲み干したことも。  今夜の美奈が、今までの彼女と違うというのなら、それは響との行為の残り火が見せた幻に過ぎない。 (女って弱い…) 他の女を抱く同じ腕で、しゃあしゃあと自分を抱く男に、憎しみと軽蔑さえ覚えるのに、身体は反応してしまうのだ。欲望の残滓(ざんし)を受け入れる土壌を作ってしまうのだ。 「雄大、さん…」  立っていられなくて、彼の首に腕を回す。そんな美奈の臀部を支えながら、雄大の腰の動きは激しくなる。 「美奈、イクよ…っ」  雄大の欲望は美奈の内部で直接爆ぜる。美奈の固く閉じた瞼の裏には、今夜の響の顔が浮かんでいた。
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