狂った絆

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 雄大は飽くまでも徹底抗戦の構えを見せる。早く別れてしまった方が、お互いに傷は浅いだろうに、雄大は流れる血の最後の一滴までもを流してからでないと、負けを認められない男らしい。 (愛情と言うより意地と矜持の問題のような気もするけど)  自分が雄大の頑なな態度を煽ってるんだろうことは、何となく響は感じてる。美奈の相手が自分のような青二才だから、余計に雄大は後に引けないのだろう。  だけど響だって引けない。二度も身を割くような思いで、美奈と別れたのだ。もう美奈を失ったあの虚ろな日々には戻りたくない。 「平気だよ、ミーナ」  雄大の認めない宣言に、顔を曇らせた美奈に、響は優しく語りかける。 「一方が認めなくても、離婚を成立させる方法はある。家庭裁判所に調停を申し立てたり、それでもダメなら裁判起こしたりね」 「何で響がそんなこと…」  知ってるの?と聞こうとしたそばから、雄大の横槍が入る。 「時間も金も掛かるだけだぞ。そうまでして、そんな得たいの知れない男と一緒になりたいのか、美奈」 「それはミーナが決めることで、あなたが指図することじゃない」 「同じ台詞を君に返しておこうか。変な入れ知恵を妻にするのはやめてもらえないか。更に言うなら、ミーナと呼ぶのはやめろと言った筈だ」  延々続くふたりのやりとりに美奈は思わず溜息をつく。無論自分を間に挟んでのバトルということはわかってるのだが。 (なんか、私抜きで話が進んでるような…)  と言って、響と雄大の皮肉の応酬に割って入る勇気が美奈にはない。  結局、美奈は別れたい、雄大は別れない、の一点張りは変わらず。話し合いは決着をみないままに終わった。 「調停でも裁判でもやりたければやればいい。時間がかかればかかるだけ、美奈は後悔すると思うよ」 雄大の言葉が、泥仕合の開会宣言のようだった。
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