後日譚 2 青い嵐

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後日譚 2 青い嵐

胎内に宿る我が子に、中から激しく突かれて、美奈は覚醒してしまった。 もう妊娠9ヶ月にもなる腹は、胸の下からなだらかな曲線を描き、昔話に出てくる山のようになっている。かなり大きくなったと思うのだが、中の人には窮屈なのか、日に何回もパンチやキックをされる。 初めのうちは弱々しかった胎動も、時に美奈が痛みに顔を歪めるほど、力強いものになっている。 来月が臨月だから無理もないし、元気な証なのだから、安心するべきなのだが。しばしばこんな風に真夜中に起こされて美奈は若干寝不足気味だ。 もともと、一度目を醒ましてしまうと、なかなか寝付けない質で、しかも今夜は微妙に蒸し暑い。じわりと肌着に滲んだ汗にも気づいてしまった。 この辺りは東京よりは涼しい気候だが、それでも7月半ばの風のない夜は、窓を閉めきっていると蒸し暑い。まして、美奈は身重だ。平素より10キロも増えた体重、スイカでも常に抱えているような腹部は、気温以上の暑さを覚える。 (…着替えよ) 美奈が眠ってる間に、深夜勤務から戻ってきたらしい隣で眠る響を起こさないように、そっとベッドをすり抜けたつもりだったのに、ぐっと腕を掴まれた。「きゃっ」と短く悲鳴を上げた妻に、美奈を拘束してない方の手で、響は目を擦りながら尋ねる。 「…何処行くの?」 「あ、ごめん、起こして。…寝汗かいちゃったから着替えようと思って」 「そうなの?」 「…うん…って、やあっ、響っ」 美奈のパジャマ代わりのワンピースの裾から、響は背中側に腕を差し入れる。ぺたぺたと手のひらで美奈の肌の具合を確かめてから。 「暑いなら脱いじゃえば?」 彼らしい理屈で言うと、強引に美奈のワンピースを脱がしに掛かった。ゆったりめに作られたワンピースはすぐに頭から抜かれてしまう。あっという間に美奈は、下に着てたキャミソールとショーツ1枚にされてしまった。
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