百物語(サバ)

1/3
前へ
/3ページ
次へ
その日はとても疲れてたのね。なんだっけ、たしか部署の小さい引越しみたいなのがあって、重いダンボールを移動させて数をかぞえたり、立ったり座ったり、しゃがんだり、いつもと違う動きをした体も痛いし、慣れない事をした頭も疲れてた。だからすぐ寝ちゃうなって思いながら布団に入ったの。 でも寝れない。次の日も仕事だったから少しでもたくさん寝て回復したいのに寝れない。寝よう寝ようと思うと逆に寝れなくなっちゃうやつで、一時間ぐらいゴロゴロしてたのね。 でね、私の家って大きい時計あるのよ。新築祝いで親が誰かからもらったってやつなんだけど、あれ二十四時間チクタクいってるし一時間ごとにボーンボーンってなるわけ。私の部屋まではチクタクは聞こえないけどボーンボーンは聞こえるのね。十二時とか長すぎてうるさいんだけど、あれが二回鳴って、二時なんだなあって思って、そしたら友達の言ってた怖い話を思い出して、幽霊の出る時間帯とかってやつ……そう、それ、丑三つ時。 一度考え始めたら何だか怖くなってきちゃって、外で遊んでたり明るい部屋でテレビ見てたりしたら二時でも三時でも気にならないのに、暗い部屋で寝てると怖くなってきちゃって、小さな音が気になったりして、なおさら寝たいのに寝れない。 でね、なんとなく寝返りをうったわけ。壁を向くほうに。そしたら自分と壁の間に、ほんのちょっとしかない隙間にね、いたのよ、 サバ。 大きなサバがこっちを、何で笑うの!? 私その時すごい怖かったし今思い出しても怖いんだけど! ネタじゃないしサバ見たし! すごい死んだような目でこっち見てて、えっ、うん、そうだよ、横向きに……魚の目って横についてるから横顔っていうか…… いやいやネタじゃないし寿司ネタでもないしサバ見たし!
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加