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「待て待て待てい! 生涯に一度あるか無いかという大チャンスだぞい!」
「いやでも正直怪しいというか何というか……」
「何を言う! 神様であるぞよ!」
「いや、だからその物言いが一番怪しいって……」
「煙と共に現れた件はどう思うんじゃ? 不思議じゃろ?」
「ああ、それは……でも、マンホールの下に隠れてたとか──」
そう言いながら視線を下に向けてみるが、ちょうどこの辺りにはマンホールがひとつも無かった。
道の両サイドにはブロック塀が立ち並び、この老人が隠れられるような隙間なども一切無い。
ま、まさか……。
「本物の神様!?」
「フォッフォッフォ! ようやく信じてくれおったか。人類100兆回目のため息者よ!」
「タメイキモノ?? えっ、ため息てさっきの? それが人類で100兆回目だったの?」
心の中で100兆を全世界の人口で割ってみたり、いやいや昔いた人たちの数も入れないとダメだから……など計算しようとして挫折した。
こうなったら全て神様の言うことを信じよう。
決して順風満帆では無い人生の中で、『神様どうかお願いします』と頼んだ回数は決して少なくない。
ついに、その願いが叶う時が来たのだと思うことにした。
「さあ、どんなものでもひとつだけ100倍にしてあげるぞよ。お前さんは一体なにを100倍にしたいんじゃ?」
「えっ……うーん、100倍? って突然言われても……。どんなものでも、って例えば身長とかでもイケるってこと?」
「フォッフォッフォ! 身長じゃな。了解。それじゃ──」
「いやいやいや! ちょっと待って!! やだよ! 確かに平均身長より低いからもっと背が高くなりたいって思うことは沢山あったけど、100倍ってことは165mになるってことでしょ? ビルで言うと40階ぐらい? ……いやいやいや!」
僕は、頭の中で巨大化した自分が四方八方からミサイルで攻撃されている光景を思い浮かべながら、必死で神様を止めた。
「違ったのか? 紛らわしいのう。じゃあ、何を100倍にしたいんじゃ?」
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