第一章

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 彼女はスケートボードを抱えバス道を北に向かった。心地よい風のせいか腹の虫は既に収まりつつあったのだが、彼女のことが何故か気になってそのままついていくことにした。彼女は国道沿いの駐車場に入っていった。  商店街の西側のこの辺りは所謂裏通りで、私鉄の駅のある東側が商店街の正面になる。裏通りはマンションや商業ビルが立ち並ぶオフィス街といった雰囲気だ。  駐車場に派手な塗装のトレーラーが停まっていた。アロハブリードという漫画チックなロゴとビキニ姿の女性のイラストからするとハワイ料理のキッチンカーといったところか。彼女がトレーラーのドアをノックすると、ボディービルダー体格の男が出てきた。彼女の話を聞いて男が僕の方を見る。ストーカーか何かだと説明したのだろうか、男は僕のことを見据えたまま僕に向かって真っ直ぐに近付いてきた。僕は蛇に睨まれた状態で踵を返すことも出来なかった。 「怪しい者じゃありませんから。知り合いを訪ねて来ただけで、そしたら警官に行く手を阻まれて、それから・・・・」  訊かれもしないのに僕はバスを降りてから今に至る経緯を男に説明していた。 「朝メシ未だなら食ってけば、って。準備中だけど一食分ならすぐに出来っから」  男はボソッと言ってトレーラーに戻っていった。拍子抜けと言うか、訳が分からないと言うか、僕はただ茫然と筋肉ではち切れそうなランニングの背中を眺めていた。
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