第一章

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「ユズルとはどういった関係なんですか? その・・・・」  僕は震える声を何とか宥めて訊いた。 「えっ? 聞いてないんだ?」  男はしげしげと僕の顔を眺めてから唇を窄めて溜め息をついた。 「そちらさんの事情はよく分からないけど、知らないままの方が良いこともありますからね。そっとしといた方がいいんじゃないですか?」  男はそう言って同情するような笑みを浮かべた。僕はユズルの住んでいる世界から締め出されたような気がして酷く焦った。どんどん離れていって手が届かなくなりそうで怖かった。 「ユズルは僕の彼女なんです」  人前でこんなことを大胆に宣言したのは初めてだった。言い終えて自分でも驚いている。 「兎に角、ユズルが此処でどんな生活をしていたのか、どんな些細なことでも構わないので知りたいんです。お願いします」  男は再び溜め息をついてから大袈裟に天を仰いだ。 「彼女が此処でどんな暮らしをしていたかなんてどうだっていいじゃないですか? そんなこと知ってもろくなことにはなりませんよ」 「何か危ないことに関わっていたとか、そういうんじゃないんですよね? その、何と言うのか・・・・」 「法は犯していませんよ」  男は素っ気なく答えた。 「当て嵌まる法が見つからないって言った方が正しいんだけど」  僕の頭は混乱するばかりで、ユズルがどんどん遠くへ走り去っていく。悲壮感が漂っていたのか、男は僕の肩を軽いた。 「まあ、生き方なんて人それぞれだから。秘密の一つや二つで壊れる関係なら壊れた方がいいんですよ」  男は徐に立ち上がり店の中のマスターに向かって両手をクロスさせてバッテンを作った。
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