第二章

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「ちょっと待って下さい。なぜ謝るんですか? ユズルは夏祭りに屋台を出すのをとても楽しみにしていましたし、全て皆さんのおかげだって感謝していました。それが、なぜ皆さんが猛省するんですか? 全然意味が分からないんですけど」  ボディービルダー体格の男は左田教授の表情を窺ってから僕の方に向き直った。 「以前から噂は耳にしていたんです。馬酔木通りでは夏祭りの度に誰かが姿を消すって・・・・」  彼はくぐもった声で言った。 「それぞれの勢力の長が集まって、馬酔木通りの微妙な力の均衡を保つ為に誰が生贄として最適か話し合って決めるんだとか・・・・」  僕は思わず「生贄?」と素っ頓狂な声で復唱した。 「地場の怪談話とか都市伝説とかの類だって高を括っていたんです。だってそうでしょう? 現代社会にそんな前近代的で奇怪極まりない風習が存在しているなんて、とても・・・・」  僕は一度深呼吸してから彼を睨み付けて確認した。 「ユズルが生贄にされたとでも言うんですか?」
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