第二章

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「もういいですよ。そら、ユズルがどうなろうと知ったこっちゃないって思いますよね? あなたたちにしてみれば完璧な他人事なんだし・・・・」  ユズルのことを本当に心配しているのは自分だけなのだと改めて痛感していた。バンダナ男の脅しに屈している場合ではないのだ。 「もう一度、馬酔木通りに行ってきます。こんなところで幾ら情報集めてたって何の役にも立ちそうにないし・・・・」  もう手遅れかもしれない。そんな考えてはいけないことが頭に浮かんで、身体の芯の方から徐々に凍り付いていくような感覚に囚われてしまう。僕は忌まわしい迷妄を振り払うかのように勢いよく踵を返した。  すると、背後から左田教授の落ち着き払った声がした。 「お気持ちは分かりますが、最低限、この勢力地図を理解してからでないと、馬酔木通りに乗り込んでいっても玉砕するだけだと思いますよ」  啖呵を切った手前、彼らの世話にはなりたくなかったのだが、左田教授の発言はどう考えても的を射ていた。胸糞悪いが彼らの指南を受ける必要がありそうだ。僕は身体中の嫌悪感を一旦脇へと追いやり重い一歩を何とか踏み出して彼らの元へ戻った。ユズルを救うためなら仕方ない。
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