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老人の一人が倒れている女性に向かって追い討ちをかけるように噴水を浴びせているのを、流石に黙って見ているわけにはいかなかった。
「止めて下さい。子供の前ですよ。そんなことして・・・・恥ずかしくないんですか?」
気が付いたら僕は普段なら絶対に口にしないような優等生発言をしていた。それでも老人が止めないので仕方なく高圧洗浄機を力ずくで奪い取ると、老人は僕がひったくり犯であるかのように怒りと怯えの入り混じった表情で睨み付けてきた。警官たちも蔑むような表情だ。
「あんたら絶対におかしいよ」
心の中で叫んで、取り敢えず倒れている女性に駆け寄り腕を掴んで身体を起こした。両方の小鼻に沢山のピアスが陳列棚の如くぶら下がっていたので僕はドキッとした。
「大丈夫ですか?」
そう声を掛けた後に僕は絶句してしまった。彼女が僕の手を激しく払い除けたからだ。しかも痴漢に遭ったかのような表情で睨み付けてくる。僕は反射的に手を引っ込めた。
彼女は何事もなかったかのようにスクッと立ち上がると、濡れた身体を気にする素振りも無くスケートボードを拾い上げて歩き出した。
僕は呆気にとられてしばらくぼんやりと眺めていたが、段々と腹が立ってきて彼女の後を追った。
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