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「ちょっと、何言ってるかわからない」
もう何べんこの言葉が口をついたか覚えていない。同じ日本語、同じサッカーについて語り合っているはずがまるで通じ合えない。こんなことは彼女との間には起こったことがなかった。
改源はこの時二十代半ば、選手として脂が乗ってきた時期である。また働きながらではなくプロ選手としてサッカーをやっていることに誇りも感じていた。
日本に自分の才能を買ってくれるチームがなければ、海外に行く。その決断に迷いはなかった。
菅原は違った。すでに選手としてのピークは過ぎ、衰え始めた能力を経験でごまかしてる自覚もあった。そして彼女は頭に大ケガを負ったばかりだった。相手のシュートに顔から突っ込むという恐れを知らないプレーで頭に裂傷を負い、いまだに包帯が外れない。
菅原はクラブに残ることを選択した。現役を引退し、指導者として。
そして改源はアメリカに渡った。
風神雷神コンビは、こうして解消された。
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