紅白饅頭

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骨折を隠したまま、改源は代表合宿に向かった。 監督の答えはシンプルだった。 「おまえは、異状ない」 他の選手に交じり、いつもと同じように練習メニューをこなす。東京開催の試合ということもあり報道陣が練習にも多く詰めかけている。いつ、どこから情報が漏れ出すかわからなかった。 ジョーンズ骨折は足の小指の中ほどの疲労骨折である。痛みにさえ耐えきれば歩行くらいなら可能である。が、動かしている間は決して治らない。 いつもと変わらぬ風をしている監督だが、知らぬうちに拳を固く握りしめていた。爪の先が赤く染まるほどに、強く。 「望むところです」 そこから改源とケガとの壮絶な戦いが始まったのだ。
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