紅白饅頭

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決戦の朝。 いつものように座薬を入れた改源は一人、宿舎近くの西新宿をぶらぶらと歩いた。都庁付近のあまりなじみのない場所で、ちょっとした散策気分である。 ちょっと込み入った場所に、熊野神社があった。日本書紀に出てくる三本足の烏、ヤタガラスは日本代表のエンブレムにその姿を刻まれた神の遣いである。 偶然こんなものを見つけてしまったことに興奮し、生まれて初めて心の底からの神頼みをした。お守りも買って帰ろうとも思ったが、改源はすでに首から柴又帝釈天の勝ち守を下げている。お守りを二つ持つのは禁忌とされており、やむなく断念した。 おかげで朝食前のミーティングに遅刻してしまった。 監督がスターティングイレブンを発表する。いつもの場所に、改源の名前がなかった。 少なからず動揺するチームメートに、改源は今朝の話をした。うちらには神様がついている。信じられるものは何でも信じよう、と。
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