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行方不明の家族を探してほしい。
旦那の浮気調査をしてほしい。
奪われた宝物を取り戻してほしい。
都内某所で探偵業を営む男――東雲アラタ。
仕事を通して社会の仕組みが少しずつわかってきた二十代半ばの青年。
そんな彼のもとには様々な依頼が舞い込んでくる。
そして今日も『とある男を救ってほしい』との依頼が舞い込んできた。
が、その依頼人が特殊であった。子猫である。依頼人ならぬ依頼猫。
探偵を始めて二年ほど経つが依頼人が人ではないケースは初めてであった。
ミャーミャーとどこか鬼気迫ったように、アラタの足元で必死に訴えて来る子猫。
そんな子猫を放っておくこともできず、彼は依頼を引き受けることにした。
「ここか……」
アラタがたどり着いたのは総合病院のとある病室。
中へ踏み込むと、ベッドに横たわる一人の男性の姿が目に留まった。
男性の名は林トモヤ。二十四歳、大手企業に勤める会社員である。
聞き込みなどの調査結果、二日前の深夜、突然道路へ飛び出したところを車に轢かれ以後、昏睡状態に陥ったことが判明した。
「ちょっくら起こしに行くか」
そう独りごちりながら、はめている黒の手袋を外すアラタ。
そして、そっとトモヤの額に手を当て、瞳を閉じた――。
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