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あと95日、どうやら隕石衝突が本当らしいと皆が感じ始めた。
テレビは狂ったように特番ばかりだ。政府の陰謀論、隕石の衝突に見舞われたらどうしたらいいか…テレビは無意味で退屈なものになった。僕はテレビを消してリモコンを放り投げる。
「つけておいてよ、時間と天気がわからないじゃない」
母さんに言われてテレビをつけ直す。母さんには隕石衝突より今日の天気と朝の準備の方が大事らしい。僕はテレビを再び付けた。
どのアナウンサーも最後の〆の言葉は一緒だった。
『みなさん、落ち着いて行動してください』
今日も曲がり角で陽菜ちゃんは僕を待っている。
「おはよう。世界が滅ぶって言われてからあっという間だね」
「そんな年末を迎えるみたいに。おはよう」
僕たちは連れだって歩き出す。
「正直、実感ないし」
「ほんとにね。あ、でも隣のクラスの斎藤さんは泣いてたっけ。将来はアイドルになるって頑張ってたから…」
「それは、しんどいね」
学校に行く途中の道で、スピード違反をした車の運転手がおまわりさんに怒鳴り声をあげていた。
「どうせ世界が滅ぶっていうのに何がスピード違反だ!ルールなんてどうでもいいんだよ!」
「どうでもよくないです!」
僕らはその会話を最後まで聞くことなく学校へ歩き続ける。あんなの聞いてたら遅刻しちゃう。
ただ、ここ最近思っていたことを陽菜ちゃんだけに聞こえるよう呟いた。
「落ち着いてなんて無理だよね」
「うん」
僕らは学校についた。
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