世界はあと100日で滅ぶ

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 あと60日、学校に来る生徒の数が半分になった。僕の学校だけでなく全国で学級閉鎖が相次いでいる。僕の家でも家族会議の場が設けられた。 「あと60日で世界が滅ぶらしいのにこのまま過ごしていていいのか?」 という父さんからの議題だった。  1ヵ月以上経ってからこんな話を始めてるのだから、僕の家族はのんきだ。 「お父さんはなにかやりたいことあるの?」 「海外行きたいな!実は行ったことなくてな…」 「今すごく治安悪いわよ?」 「う…た、台湾あたりなら大丈夫じゃないかな?」  母さんの冷静な意見にすぐ勢いがなくなっているあたりどこまで本気だったのか僕は疑わしい。母さんは気にせず話を続ける。 「でも、いいんじゃない?死ぬ直前に「やればよかった…」って思うよりは。危ない目に合って「やっぱり家に居ればよかった…」と思うのとさしてかわらないわよ」 「…そうだよな…」  うちの母さんは人のやる気を削ぐのが上手い。率直な言葉が人の熱意を地味に削ぐ。父さんはもう海外に行く気が無くなっているようだ。  父さんが本気でやりたいことなんて父さんにもわからないのかもしれない。  じゃあ僕が本気でやりたいことってなんだろう?考えて浮かんできたことは一つだけだった。 「颯太は何かやりたいことないのか?」 「うーん。じゃあ、一個だけお願いがあるんだけど…」  僕は些細な本気のお願いごとを家族に伝えた。  その日は学校に行けないくらい長い家族会議になった。  陽菜ちゃんは僕を待っていて遅刻したらしい。次の日謝った。
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