世界はあと100日で滅ぶ

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 あと30日、時間はあっという間に過ぎた。強盗などの犯罪が急増しているらしく全国の警察の人は過労状態らしい。  僕の家族は「最後の日まで普通に過ごす」ことにした。なので今日も中学生の僕は登校する。  陽菜ちゃんは曲がり角で僕を待っている。 「おはよう、夏だけと寒いね」 「おはよう、昨日は雪が降ったね」 「隕石の接近が影響してるからだっけ?いやあ終末じみてますなー」  しみじみと陽菜ちゃんが頷く。その首には白いマフラーが巻かれている。 「午後から真夏日になるらしいよ」 「本当?やだなあ私すごく寒いから冬服で来ちゃった。隕石ほんと止めて欲しい」  まるでテストと同じくらいのノリで言うので僕は笑ってしまった。 「陽菜ちゃ…笠井さんは本当に隕石が落ちると思ってる?」 「うーん…あれだけテレビで何度も落ちるって言われちゃうと…急に雪降ったり地震が増えたりしてるし…信じるしか、無いかなって」 「そうだよねえ。今更『ウソでした』って言われたらそれこそ暴動が起きると思うよ」 「…ほんと、嘘はいけないよね。嘘は」  突然陽菜ちゃんの声のトーンが下がる。長い付き合いでわかる。これは愚痴を僕に聞いて欲しいってポーズだ。 「あの、どうしたの?彼氏さんと何かあった?」 「私との約束をドタキャンして元カノと会ってたの」  僕はどうフォローしていいかわからなくて黙った。彼氏さんのフォローじゃなくて、彼氏さんに嘘つかれて傷ついている陽菜ちゃんのフォローだ。 「あと30日じゃん。私は一緒に居たいんだけど向こうはそうじゃないらしくって、というか重いみたいで露骨に返信が遅いんだよね」 「う、うん」  陽菜ちゃんが急に饒舌になり始めた。これは長くなると僕は覚悟した。  今でこそ陽菜ちゃんは大人しい女の子って感じだが、元々は男子に混じってサッカーとかやる気の強いタイプだった。 「別にさ、私も頻繁に話さなくっても平気なタイプだけど、毎回連絡が私からってやっぱり腹立ってくるのよね。せめて楽しそうなフリくらいしてよって思うのよ。デートコース決めたの全部私じゃんって」  陽菜ちゃんは可愛い。それは認めよう。  でも文句はすごく長い。溜め込む分、吐き出すのも一気に出すタイプだ。 「あと30日だし、今までぼかしてたけどはっきり言ってみようかな」 「それもいいかもね」  こうやって僕に当たり散らされるよりはいいと思う。  僕らは学校についた。
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