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あと5日、とっくに社会は機能していない。でもどこか安穏とした空気だ。
もう皆犯罪には飽きたし、やる意味ももうないと分かったらしい。
今日も陽菜ちゃんが僕を待っている。
「おはよう、今日はいい天気ね」
「おはよう、昨日は1日中ゲリラ豪雨だったもんね」
僕たちは連れ立って歩き出す。
「颯太くん、昨日もここに来たりしてないよね?」
「来ないよ。学校に行ける雨じゃなかったし」
「なら良かった。私も昨日は来なかったから」
「陽菜ちゃんもさすがに家にいたでしょ?」
陽菜ちゃんが黙り込む。
「え、もしかして外に出たの?」
「彼氏に…呼ばれてね…」
「それで行っちゃったの!?危ないじゃん!」
洪水こそ僕らの家の近くでは起きなかったが、本当にすごい雨だった。
僕の家の前はただの道路なのに水が処理しきれなくて、ちょっとした川みたいになってしまった。
「だって…!『あの7日しかないんだぞ?俺らこのままでいいのかよ』って…私もこんな微妙な関係のまま人生終わらせたくなかったし…」
「なら彼氏さんが陽菜ちゃんち行けばよかったんじゃ?」
「……うまく丸め込まれちゃって…」
陽菜ちゃん、もしかして駄目男好きなんじゃないかな?
「それで、仲直りできた?」
「この話、おしまい」
陽菜ちゃんがわざとらしい笑顔で話を無理やり中断する。
「ほら学校に行かなきゃ!」
「ええー…」
すっきりしない話を聞かされて、もやもやしたまま僕らは学校についた。
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