世界はあと100日で滅ぶ

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 あと5日、とっくに社会は機能していない。でもどこか安穏とした空気だ。  もう皆犯罪には飽きたし、やる意味ももうないと分かったらしい。  今日も陽菜ちゃんが僕を待っている。 「おはよう、今日はいい天気ね」 「おはよう、昨日は1日中ゲリラ豪雨だったもんね」  僕たちは連れ立って歩き出す。 「颯太くん、昨日もここに来たりしてないよね?」 「来ないよ。学校に行ける雨じゃなかったし」 「なら良かった。私も昨日は来なかったから」 「陽菜ちゃんもさすがに家にいたでしょ?」  陽菜ちゃんが黙り込む。 「え、もしかして外に出たの?」 「彼氏に…呼ばれてね…」 「それで行っちゃったの!?危ないじゃん!」  洪水こそ僕らの家の近くでは起きなかったが、本当にすごい雨だった。  僕の家の前はただの道路なのに水が処理しきれなくて、ちょっとした川みたいになってしまった。 「だって…!『あの7日しかないんだぞ?俺らこのままでいいのかよ』って…私もこんな微妙な関係のまま人生終わらせたくなかったし…」 「なら彼氏さんが陽菜ちゃんち行けばよかったんじゃ?」 「……うまく丸め込まれちゃって…」  陽菜ちゃん、もしかして駄目男好きなんじゃないかな? 「それで、仲直りできた?」 「この話、おしまい」  陽菜ちゃんがわざとらしい笑顔で話を無理やり中断する。 「ほら学校に行かなきゃ!」 「ええー…」  すっきりしない話を聞かされて、もやもやしたまま僕らは学校についた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加