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数年前から続いていた「異世界もの」のライトノベルやアニメの流行。
その理由として、ストレスからの開放や願望の充足などが語られていたのは記憶に新しい。
しかし、今では誰しもが「シンクロニシティ」という言葉をつかう。
今日における異世界の発見。
集合的無意識が異世界の発見を予兆し、創作に表れていた……という理屈だ。
その正否はともかく、ひとつ言えるのは一般人がチートになることや転生することはなく、異世界への渡航は国によって厳重に管理されているということだ。
実際のところ、異世界が発見されても日々の生活に変化はない。
ましてや自分の辞書編集者という職業が異世界と結びつくなんて、考えもしなかった。
異動初日。
社内的にも『異世界百科事典』のプロジェクトは秘匿されており、社長室のとなりにあった会議室を新調したフロアは「新規事業部」とされている。
前日までにまとめておいた私物を抱えて扉を開くと、すでに3名の人影があった。
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