◆春の嵐

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新学期が始まって、いよいよ進路についてちゃんと考えなくてはいけなくなった。3者面談は6月。それまでに希望を書いて、先生に提出しなくてはいけない。もう4月も終わりに迫ってきていても、私はとにかく迷いに迷っていた。 「沙耶。元気ないね」杏美香が聞いてきた。 「うん。まだ進路迷ってるの」 「いいじゃん、沙耶は。最悪モデルの道があるでしょ?」 「うん、それはそうだけど・・・事務所の人も、最悪はそのままモデルやればいい、みたいな事は言ってくれた」 「じゃあ良いじゃない。私なんて、なぁんにもないから、4年生の大学行って、とりあえず自分の道を探そうかなって思ってるだけだよ」 「でも、なんだかそれで良いのかなって思っちゃうのよね」 「ぜーたくな悩みー」 「えーそぅかなぁ・・・」 「まあ、贅沢かどうかは、本人の基準じゃないから、そんなこと言うのは卑怯なんだけどね」 「そんなもの?」 「うん、そんなもんよ」 そう言って杏美香は自分の髪の枝毛を探すしぐさをした。 「ところで、愛しの彼氏とはその後どうなの?」 「愛しの彼氏?そんなもんいないわよ」 「えー?試験の最終日、血相を変えて出て行って、車に乗り込んで行っちゃった、っていう証言があるんだけどなー」 私はびっくりした。あれって、そんな話になってるんだ。 いや、確かに状況からすると、彼氏がデートに迎えに来たっていうシチュにもなりうるけど・・・でもなんて言おう?愛しのカノジョなんて言うわけにもいかないし・・・ 「あ・・・あれ?あれ・・・ね。そんなんじゃないわよ?あ・・そう、事務所のマネージャーさんが、急な仕事が入ったから急いで来てって言われて、行っただけなの」 「ふぅぅん。とてもそうは見えなかったけどな。メッセ見た時の沙耶の顔・・・」 「あ、いや、あの、やりたかった仕事だったから、ちょっと舞い上がっちゃって」 「ふーん。そういうことにしておきましょ」 絶対信じてないな・・・まあ、確かに嘘だから信じられないのも無理はないけどね。 それはそれとして、本当にどうしよう・・・ユリさんからの連絡も途絶えがちだし、あれから会ってないし、相談するにも誰に相談したものか・・・ すると、北崎さんからGWの予定を確認するメッセが届いた。 【沙耶ちゃん、GWに1泊2日でグラビアのお仕事があるけど、出れそうですか】 特に決まった予定もなかったので、【大丈夫です】と返事した。すると、【では、詳細はまた別途送ります。キツイ下着の着用を控えておいてください】 あれ?それって水着撮影があるってこと?あー、了解するんじゃなかった・・・でもモデルやる以上、そういうのもこなさないとね。私は覚悟を決めることにした。 GWに入り、北崎さんから詳しい時程が届いた。朝一で飛行機で宮崎空港に行き、日南海岸で夏物ファッションの撮影会、次の日の朝早くに朝日を浴びての撮影とのこと。 あ、ユリさんも一緒だ。こないだ一緒だった弥生さんも・・・3姉妹グラビアって???ふぅん、いろいろ考える人がいるんだなぁ・・・ 前の日の夜にユリさんからメッセが来た。 【さおりんから聞いたよ。一緒にお仕事できるね?楽しみー】 【わたしも楽しみです。足をひっぱらないように頑張ります】 【大丈夫だよー、沙耶ちゃんなら完ぺきー♡】 そんなやりとりが嬉しくて、その夜はあんまり眠れなかった。
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