◆春の嵐

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当日空港には北崎さんと弥生さんだけだった。 「あれ?ユリさんは?」 「ああ、ユーリは昨日のうちに宮崎に入っているわ」 「そうなんですか」 一緒に飛行機の旅ができるとわくわくしてたんだけど・・・しょうがないよね。 飛行機では弥生さんと並んで座った。聞けば弥生さんは25歳。ユリさんの2歳上?あれ、もう少し上に見えたけど? 「あー、あの時はヤングミセスとマタニティでしょ?老け顔メイクをすこし入れて、30歳くらいに見えるようにしてたのよ」 ふぅーん、メイクってすごいんだな。確かによく見ると、そんな年上には見えなかった。でも私とユリさんが5歳差だから、ちょっと離れた妹って感じ? 宮崎空港から日南海岸までは大きめのバンで移動だった。 これってロケバンってやつ?ちょっとワクワクしてきた。 日南海岸ではすでにもう1台のバンが待機していて、カメラなどの撮影機材をセットアップしていた。ユリさんはバンの中にいるらしかった。 そちらのバンに乗り換えると、ユリさんが中でメイクをしてもらっているところだった。 「あ、沙耶ちゃん」 メイク中なのであんまりしゃべれないらしく、手を小さく振ってくれた。 私も嬉しくなったけど弥生さんの手前、「ユリさん、お久しぶりです」とだけ言った。 撮影は夏物の肩が大きくあいたサマードレスを数種類、3人同じイメージで合わせた、それでもバージョン違いで年齢がわかるようなデザインになっていた。私のは末娘らしく可愛らしい感じ、弥生さんのはすこしアダルトな雰囲気、ユリさんのははつらつとしたお嬢さんと言う感じだった。 スタイリストさんが同行していて、着替えたあと、実際の場所で小物と服の微調整をして、写真映りが良くなるように整えていた。 砂浜で散歩したり、戯れたり、座っておしゃべりしたり、楽しかった。 仲のいい姉妹という設定で、弥生さんのほんわかした雰囲気とユリさんのはつらつとした雰囲気が際立っていたので、私はかわいい、ちょっと甘えん坊な妹を演出してみた。 「お疲れさまー」 1日目の撮影が終わり、夕食をスタッフの人たちと一緒にレストランでとった。 ユリさんと弥生さんはほんとの姉妹のように、楽し気に話をしている。 ビールを飲んで、少し酔った顔をしたユリさんがセクシーに見えた。 私は、みんなの中で唯一の未成年だったこともあり、スタッフさんが気を使ってくれて、いろいろ話かけてくれるので、ユリさんとゆっくり話ができなかった。 (ユリさん、移籍の話って結局どうなっているの?移籍しちゃったら、もう会えなくなるの?)私はいろいろ聞きたいのを抑えて、なんとかスタッフの皆さんとの話に合わせていた。 その日の夜はみんな同じホテルだった。ビジネスホテルということもあり、狭い部屋だったけど、全員個室だった。 とりあえず荷物を置いて、軽くシャワーを浴びた。 日焼け止めを塗っていたけど、熱いお湯をかけると少し首筋がひりひりした。 (あー、やっぱり日焼けしちゃった・・・)私は準備していた冷えピタを首筋に貼って、ベッドに横になった。 すると、ユリさんからメッセージがきた。 【沙耶ちゃん、もう寝ちゃった?起きてたら、私の部屋に来て。302号室よ】 私は飛び起きた。【まだ寝てません。今から行きます】 そう打って、そっと部屋を出た。 302号室を確認してドアをノックした。 ガチャっと音がして中からユリさんが手招きした。 私が入ると、そーっとドアを締めながら 「沙耶ちゃん。久しぶり・・・」 ドアが閉まると同時にキスしてくれた。 「んっ・・・」私は嬉しくて、今までの寂しさを埋め合わせるように、ユリさんの唇を、舌を丁寧に丁寧にしゃぶった。 ユリさんも同じくらい丁寧に丁寧に私の唇を、舌を咥えては離し、舐めては押し付け、気が済むまでぞんぶんにお互いを堪能した。 「沙耶ちゃん、今日、楽しかったね?」 「はい。とっても」 「明日も楽しもうね」 「はい」 「今日は、ほんとはこのまま一緒に寝たいけど、明日早いし、別で寝ましょう」 「え・・・あ、はい」 私は少し残念な気持ちで、うつむいた。 「でもね、それだと寂しいから、ちょっとだけ、しよ?」 私は嬉しくなって、うなずいた。 と、ユリさんはまたあごクイをして、私にキスをしてくれた。 私はユリさんの首に腕を回して胸を押し付けた。 ノーブラの胸が同じくノーブラのユリさんの胸を押し付け、先っぽ同士が少しこすれて気持ち良かった。 キスをしたまま、お互いの胸をもみあい、お互いのあそこに指をはわせ、ベッドに倒れこんで、そのままお互いのパンティの中に手を入れ、そして二人で一緒に果てた。 服を着たままの行為は、今までになく刺激的だった。 私はさっき聞きたかったことなどすっかり忘れて、行為に没頭していた。 もう一度お互いを刺激して二人で果てた後、ユリさんが1枚の手紙を渡してくれた。 「沙耶ちゃん、この手紙、明日おうちに帰ってから読んでくれる?それまで開けないって約束してくれるなら、今渡すわ。無理そうなら、明日切手を貼って郵便で出すわ」 心臓がドクンと鳴った。顔から血が引いて行くようだった。 「はい。大事な手紙なんですね?」 「うん。今は言えないけど、明後日にはわかること。沙耶ちゃんにはその前に、明日の夜に知って欲しいの」 なんとなく、予想していた気がした。多分移籍に関する話だろう。明後日にはわかるということは、明後日になんらかの発表をするということ。心のもやもやが大きくなって、私はうつむくことしか出来なかった。 「それじゃ、おやすみなさい」 そう言って部屋を出ようとしたところで、ユリさんが後ろから抱きしめて来た。 無言だった。心なしか肩が震えているようだった。 私はユリさんの手を握りしめた後、そっと腕をほどいて部屋を出て行った。
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