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誠也に下りてくるように言われて、私は結局ピットの近くまで行く羽目になった。 水筒から水分補給している誠也の隣に座る。 「ねぇ。さっきの楽しいを感じるためって何?」 私は誠也に尋ねる。 よく意味がわからなかったから。 「大会は嫌いじゃない。 真剣勝負で、記録伸ばしていくのも充実感あるし。 シビアに順位がついて、結果が出てしまうことはちょっと辛いなと思う時もあるけどさ。」 そこまで言って、誠也は私を少し気遣うような目で見る。 「もう少しだったのにな。 ……シビアだよな。」 私のことを言っていると分かる。 鼻の奥がツンとなりそうなのを慌てて抑えた。 「部活やってるとどうしてもさ、大会目指して…とか、1位目指して…とか、そうなっちゃうじゃん。 でも俺、単純に、跳ぶのが好きなんだよね。 うまく跳べた時ってさ、一瞬自分が空飛べてるような気がしてさ、すげーワクワクする。」 誠也がニコニコするもんだから、何だかほっこりする。 「そういうことってない?」 誠也に聞かれて私も思い出す。 「わかる…気がする。」 「だろ? わかってくれると思った。 お前も楽しそうに跳ぶことあるもんな。 ……この前の地区大会は……違ったっぽいけど。」 言われて気が付く。 地区大会の時は、必死すぎて、結果を残したくて、そればかり考えて跳んでいたから、楽しいなんてちっとも思わなかった。 最後の大会だったのに、すごくもったいないことをした気分になった。
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