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それから、秀一郎と息子達は浴びる程日本酒を飲んだ。一人一升近く飲んだに違いない。中でも和夫は水の様に日本酒を飲んでいた。
「和夫、そんなに飲んだら帰りはどうするの?埼玉迄帰れるの?泊っていく?」
「俺は大丈夫だよ。おふくろ。史恵、帰れるよな?」
「私は、飲んでいないから大丈夫ですよ。でもお義母さんが泊っていっていいと仰ってくださっているのだから、泊っていけば・・・」
「大丈夫だよ。ほら、しかっりしているし」
和夫は立とうとして、フラフラとよろけた。
「あれっ、上手く立てないな。ハハハ」
他人事の様に笑っている。相変わらず変わっていない、豪快で、のん気な性格だと思った。
そうして、それが、皆で正月を迎えた最後の日になった。和夫が結婚して安心したのか、秀一郎はその冬、春が来る前に風邪を拗らせてしまった。
その時秀一郎は八十三歳だった。少しの風邪でも命とりな年齢だ。案の定、倒れて救急車を呼ぶことになってしまい、入院となった。肺炎をおこし、痰を吐き出す力が無くなってしまい、喉を切って吸引する事になる。
百合子は秀一郎の死を覚悟した。
それと同時期に百合子も脳梗塞をこす。急に意識が低下して舌がもつれ上手く喋れなくなったのだ。紀美子さんが家事を手伝いに来てくれていた時なので、急いで病院に運んで貰った。もしかして二人同時期に死ぬのではないか。だが、それならそれで幸せだと思った。息子達は皆、立派な大人に育ったし、心配の種であった和夫も結婚してくれた。
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