夜の星

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そう思ってから四年が経つ。秀一郎に先立たれ、今では老人ホームで窓の外の景色を眺め、季節が移ろう様子をボーっと見ているだけの毎日になってしまった。歳のせいか、忘れっぽくなり、最近ではベッドから降りて車椅子で談話室にいくのも億劫だ。 和夫以外の息子達は近所に住んでいるので日を開けずに面会に来てくれる。だが、時間の感覚が狂ってきてしまい、昼夜逆転する日が多いので、息子が来てくれる時に寝ている事が多くなった。 何の為に生きている事やら・・・ 和夫が来るのは、盆と正月、ゴールデンウィークだけであった。史恵さんは必ず一緒に来て、埼玉県の地元のお土産を持ってきてくれた。 「おふくろ、お見舞いに来たよ。元気そうだな」 「ええ。私は元気よ。和夫も元気そうね」 気がつくと、よだれが右側の口元から垂れてしまう。和夫は持っていたハンカチでそれを拭いてくれた。 「おふくろ、よだれ大丈夫か?脳梗塞の影響だな。今日はおみやげにネギの柴漬けを買ってきたんだ。食べられるか?」 「有難う、和夫、史恵さん。外は天気が良さそうね。今日は何曜日だったかしら」 「今日はゴールデンウイーク中の祝日だよ。だからおふくろの所に来れたんだ。これから親父の所に行って線香あげて帰るよ」 「私も、行きたいわ。一緒に行く?」 「駄目だよー。ハハハ。それにおふくろはここ、出れないだろう」 そう言えば、ここに入居してから一度も外に出た事がない。 「車で来たの?何時間位かかった?」 「電車だよ。俺は車持っていないからね。三時間位かかったよ」 「まあ。電車で」 「いつもの事じゃないか。忘れっぽいな」 和夫は顔を綻ばせる。百合子はそれを見ていて和夫が子供の頃を思い出した。 「そうだった?」 百合子はキョトンとする。
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