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「史恵ちゃん、つまみに野菜炒めをくれる?」
和夫の声が虚しく心に響く。どうして史恵さんは和夫なんかと結婚する気になったのだろう。
百合子は不思議に思って、今度は史恵さんが仕事が終わるのを待って後を着けてみた。史恵さんがマンションに入っていく。どうやら母親と一緒に住んでいるようだった。
「お母さん、ただいま。まだ起きていたの?先に寝ていればいいのに」
「だって、史恵が寝る間も惜しんで働いていると思ったら悪くて」
「いいのよ。好きで仕事しているんだから」
「早く、結婚してお嫁に行って幸せになればいいのに。良い人いないの?」
「いないわよ。それにお母さんは女一人で育ててくれたんだもの。お母さんを置いてお嫁になんかいけないわ」
「あら。私の事は気にしなくていいのよ」
「気にするわよ。一人で幸せになんかなれないもの」
百合子は二人の様子を暫く眺めていた。和夫と史恵さんが結婚した時、史恵さんの母親は他界していると聞いた覚えがある。この後亡くなったのかな。
百合子は心配になり、暫くの間、史恵さんの生活ぶりを眺めた。史恵さんは真面目で責任感の強い性格の様で、仕事を休まず、昼、夜と、体力を振り絞って働いていた。和夫には勿体ない人だと思った。
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