100 Seconds

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100 Seconds

 たった100秒しか許されていないのに──。  あかりは運命を呪った。なんでこのタイミングで? まさか自分の運命を二度も呪うことになるとは思ってもみなかった。  踏切遮断機が降り、無情にも目の前の景色を電車が遮った。列車の接近を知らせる赤いランプは、下り電車の通過も予告している。  あかりは祈るように胸に手を当て、何度も地面を踏みつけた。  電車が走り去り、轟音が風に吸い込まれる。モタモタと上がる遮断機。蒼汰の姿はもうそこにはなく、踏切の向こうには街の景色がただ広がっているだけ。  ──奇跡は終わってしまったの?  夏から一緒に暮らそうと決めた矢先の出来事だった。蒼汰は飲酒運転の車にはねられ命を落とした。  急な残業が入り、会うはずだった約束を急遽キャンセルした金曜日。次の日はお互い休みだから、今日は我慢しようと慰め合った。  帰宅後、何度電話してもつながらないことに不安を感じていると、蒼汰の母から折り返しの電話が鳴った。陽気な性格の蒼汰の母。聞き取れないほどにか細く、沈んだその声色が最悪の事態を予感させた。  かけつけた病院のベッドの上。蒼汰が眠っている。二度と目覚めない眠り。姿形は何ひとつ変わらないのに、命だけがそこにはなかった。  誰よりも温かい蒼汰の手が大好きだった。触れてみるとそれはあまりにも冷たく、その瞬間に涙が溢れ出した。嗚咽は叫びに変わり、あかりは獣の咆哮のように号泣した。
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